
現在、九州地区で販売されている産経新聞は、大阪本社で印刷したものが空輸され、西日本新聞の販売店によって宅配されています。九州エリアの発行部数は公称3千部。
「なぜ50円だけしか値上げしないか」、「なぜ10月からの値上げをこんな早い段階で社告するのか」といった疑問もありますが、何より不公正な取引を定めている特殊指定の「差別定価」に当たるのではないかというのが注目すべき点です。
特殊指定では「〜@日刊新聞の発行を業とする者が、直接であろうと間接であるとを問わず、地域又は相手方により、異なる定価を付し、または定価を割り引いて新聞を販売すること。〜」を禁止しています。
ではなぜ。
社告を出すからには、すでに公取委へ打診し、特殊指定のくだりにある「ただし、学校教育用であること、大量一括購読者向けであること、その他正当かつ合理的な理由をもってするこれらの行為については、この限りでない」の合理的な理由に当たるとの確認はしているのだと思います。
新聞特殊指定を廃止したいと考えている公取委にとっては、このような取り組み(値上げであっても)は歓迎するはずです。理屈はどうであれ。
新聞業界内はどのような反応を示すのか。今回の動きを「ハイそうですか」というわけにはいかないと思います。たとえ(エリア内の)発行部数が少なくても、自ら特殊指定を崩そうとしているのですから…。
今後、産経新聞に対する業界内からの圧力は相当なものになると思われます。
産経新聞は業界の先陣を切ってさまざまなアクションを起こしてきました。2001年の夕刊廃止(東京本社)、同年の即売価格を値下げ(110円→100円)を皮切りに、ブルームバーグ社からの記事配信やウェブ関連ではマイクロソフトとの業務提携など活発な動きを見せています。しかし、2002年に起きた休刊日発行問題(駅売りの即売版)では各社からの反発を招いて、当時の清原社長が新聞協会役員(副会長)を辞任するという大騒動にまで発展しました(その後3カ月で休刊日の即売発行は休止)。
今後の動きを注視したいと思います。