はじめまして、第2期から活動に参加しております、高知新聞の明神と申します。
産政研では、考えたいテーマが多すぎて混乱の毎日ですが、任期内には、何か一つでも研究成果を上げたいと思っています。
個人的なことを言えば、カメラが趣味です。カメラといえば、こんなニュースが飛び込んできました。
米コダック、破産法第11条による事業再編を申請
[19日 ロイター] 米イーストマン・コダック(EK.N: 株価, 企業情報, レポート)と米子会社は、連邦破産法第11条の適用による事業再編を申請した。
少し前には、同社が「フィルム部門をなくし、デジタル事業に焦点」との組織改編のニュースに接したばかりです。米コダックといえば、富士フイルムと並ぶ世界的な撮影フィルム供給メーカーでした。その看板だったフィルム部門だけでなく、経営自体が破綻したというのですから、写真好きには残念なニュースです。
とはいえ、ほとんどの写真好きの間でも、もちろん使用する機器はすっかりデジタルカメラに取って代わられています。フィルムは一部の好事家が扱うもので、プロや写真愛好家から一般の方々まで、カメラといえばデジタルが当然の時代。でも、長く写真撮影の中心機器だったフィルムカメラが、その座をデジタルカメラに明け渡したのは2002年。たった10年前のことでした。
この年、主要メーカーの年間出荷台数でデジカメがフィルムカメラを上回りました。それからわずか6年後の2008年2月には、業界団体であるカメラ映像機器工業会(CIPA)が、国内メーカーのフィルムカメラ生産・出荷台数統計の発表を停止します。前月の統計では、生産が1580台、出荷は1万1573台と市場がほぼないに等しい状態にまで追いやられていました。一方、デジカメの同年の出荷台数は1億台を突破しています。
160年の歴史を持つフィルムカメラは、上述のわずか数年で事実上の終焉を迎えました。ここまで急激な変化が起こった理由は、もちろんデジカメそのものがユーザーに支持されたからです。ランニングコストの低さやデジタルデータとしての加工性、簡便性、検索性の高さ。デジカメの普及は、人々の写真撮影に対するハードルを一気に押し下げました。面倒な現像もしなくてもいいし、何よりフィルム代もかからない。携帯電話へカメラ機能が「標準搭載」になるのと相まって、誰にとっても写真が身近な時代が到来したのです。
このカメラ市場の姿が、新聞産業の明日に重なって見える人は少なくないでしょう。デジカメに駆逐されたフィルムカメラは、デジタルメディアに対する紙媒体の新聞と共通点がたくさんあります。高コスト、そしてデジタルメディアに比較しての利便性の低さ。新規ユーザーに対する垣根の高さ。固定化したサービス・・・。今の新聞の姿が、悪いイメージで重なります。
紙媒体の新聞は、すでに数年前には「20xx年、新聞は消滅する」なんて言われていましたよね。その予測よりは「長持ち」しているように、今は見えます。もちろん経営は厳しいですが、新聞が消滅したとして、その代わりを務めるサービスなりメディア、報道機関が今すぐにはないのも事実ですし、何よりデジタルメディアにおいても、ニュースやコンテンツを配信しているのは、ほとんどが新聞社をはじめとするマスメディアです。そこがカメラ市場とは違う。紙媒体の売上げに陰りがあっても、ニュースやコンテンツ配信においては、まだまだ我々がシェアを握っている。意識的にか無意識的にか、そう考えて(安堵して)いる関係者は多いことでしょう。
しかし、変化は起こるときにはあっという間です。上述の2002年、当時の民生用デジタルカメラはほとんどが200〜500万画素。現在の主流である1500万画素前後と比べると、おもちゃのような性能で、画質以外の機能でもフィルムカメラにはとうていかなわないものでした。おまけに、高価だった。それでも、ユーザーはデジカメを支持したのです。そこからの技術革新と普及は本当に、あっという間でした。
この事実は示唆に富んでいます。つまり、ユーザーは現状の性能より、未来の可能性を選択する場合があるということです。今は小さなサービスやトレンドであっても、そこにユーザーの支持と技術革新があれば、新聞産業を駆逐するのは「あっという間」である可能性が非常に高い。例えば、ニュース配信の形態は、今のような形でなくてもいいのかもしれません。もっと自由度や利便性が高く、ユーザーが望むメディアやニュースの姿が、いつか現れるとしたら。
SNSやキュレーションサービスなど、その「可能性」はネットに山ほど転がっています。おそらく、きっかけはほんの小さなことでしょう。新聞にできないことを、多くの人が望めば、そのとき新聞は消滅します。フィルムカメラのように追いやられたとしたら、未来の新聞はどうなるでしょうか。願わくば、「新聞が消滅したから、誰にとってもニュースが身近なものになった」などとは言われたくないものです。
(明神)
2012年01月19日
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