2012年11月30日

手書きの味わい

 新潟県内の読者から毎日寄せられる俳句や短歌、川柳の投稿はがきと、短編小説や詩の封書に目を通し、選者に発送して原稿をチェックする仕事をしている。身内では読者文芸デスクと呼ばれている。

 先輩デスクによると、ひと頃より投稿数は減ったようだが、それでも毎週800〜900通の投稿作が届く。投稿者の割合は60歳以上が約8割といったところ。

 投稿のはがきや封書のほとんどは手書きで、筆跡は万年筆であったり、鉛筆であったり、毎回、筆で認めてくる常連さんもいる。一通一通の手紙に人となりがにじみ出ていて、手に取りながら読者と対話しているようで、単調な仕分け作業も退屈にはならない。子どもの頃、切手収集に熱中した時期があるせいか、貼られている切手と消印を眺めるのもささやかな楽しみになっている。

 他紙(誌)と比較研究するために文芸欄をめくると、最近はメールでの投稿を受け付ける新聞社や文芸誌が増えてきた。デジカメで撮った画像と俳句・川柳を組み合わせた投稿作を募集している新聞社もある。

 ある時、選者の方々と同席した会合で、メールでの作品募集が話題に上がった。ネット社会のご時世だから、肯定的なご意見が出るのかと思いきや、手書きを支持する意見が根強かった。

 投稿者側が「手書きだから推敲を重ね、気持ちを込めて句を書くことができる」と言えば、選者側は「筆跡から作者の顔が思い浮かぶ。健康状態をうかがい知ることもある」と発言。「丁寧に書かれた句や歌に触れると正座して選考に当たることさえある」との声もあがった。文芸愛好者は高年齢層が多いという事情もあるが、日ごろ、言葉と言葉をキャッチボールしている者同士の実感のこもったやりとりは、実に説得力があった。

 新聞社が読者とつながるツールは多岐にわたる。どのツールもおろそかにはできないが、新たなツールにばかり目を奪われていては、長年の読者を置き去りしてしまうことになりかねない。

 今週も原稿用紙を糸で止めてくるご年配者や、ごはん粒を潰しノリ代わりにして原稿をとじているお年寄りから封書が届いた。ちょっとしたシミにも読者の生活の一端が見て取れたりもする。手書きの投稿作には、パソコンで送られてくるメールとは違った、何とも言えない温もりが同封≠ウれている。いつまでも大切にしたい読者とつながるツールである。

(大日方)


posted by MOT at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | メンバー日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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